「生命の範疇」 上樂 博之の記録

 

期 間 2020年 7月23日~8月9日


 生き方の中心にアニミズムを据えていた時代、岩や木、滝などの自然はただの資源ではなく、生命が息衝く存在の場として人々は認識していたのではないか。
 現代において私達はその認識を忘れ眠ったままです。
 太古に生きた人々と私達の生き方が異なる中でアニミズムの要素が現代に通ずるのは光と生命の相互関係だと考え作品を制作しました。

・線対称作品について

 世界中にある民話や神話の中には多くの聖獣や自然神などの存在が伝えられているが私はそれらを見たことが無く、新たにそのような存在が現代に産み落とされる様を見たい。
 決して荒唐無稽な話などではない。
 日本には岩や滝、大木などの御神体が神社や寺にあり、それらを生命体と定義付け未知の生き物を浮かび上がらせるように以下のルールを用いアプローチしました。

① フィルム写真で撮影する。
  加工可能なデジタルではなく写したままの姿を維持するフィルムで撮影し暗室でプリントを行う。
② 神社仏閣、修験僧の修行の場のみで撮影。
  そういった場は怪談話や心霊スポットとなっている事が多いが、神秘故に新たの生命と紐付ける事が出来る。
③ 御神体を撮影
  御神体の存在する理由を、新しく作る。
④ 撮影には大判カメラ8×10 を使う。
  一般的なフィルムと比べ、写る感じや情報量が豊かである。

 生物の多くは体を線対称になっているものがほとんどです、その為写真を線対称にして浮かび上がらせました。生命の定義の一つにある「自己複製機能を備える」という性質は、線対称の作品創りによって私の中の認識改め『生命の範疇』が広がっていくのを感じた。
 絵画からカメラへと移行しつつあった時代、完璧な自己の複製物を描写する写真を撮られると魂が抜かれると言われていた、写真の中には新たな生命が宿る事は不思議な事でないかも知れません。

【プロフィール】


1978年生まれ、岐阜県出身、神奈川県在住。
中央アルプス国立公園内 乗鞍山頂銀嶺荘で4年勤務。
山荘での生活で体験した山の荒々しさ、美しさを写真に納めたいと思いカメラを始める。
後に代官山スタジオ、スタジオ玄を経て2007年、フリーカメラマンとして独立

2011年 國美芸術展 佳作(東京都美術館)
2011年 草舟 on Earth ( 個展) 神奈川県
2013年 Life 新潟( 個展) 新潟県
2016年 コールピット( 個展) 福島県
2016年 第4回New Nature Photo Award 佳作
2018年 桜茶屋ギャラリー(グループ展) 徳島県
2019年 かがわ・山並み芸術祭2019 (塩江美術館)香川県
2020年 宇フォーラム美術館 ( 個展) 東京都
2020年 MONSTER Exhibition 2020
2020年 塩江美術館(二人展)香川県 ※予定