平松 輝子展 ジパング再興の記録

 

期  間 2021年2月11日~2月11日

  ・日本独特の花鳥風月
日本はマルコポーロの東方見聞録で黄金の国と紹介されジパングと名付けられそれがジャパンの英語の由来となった。
さらに国名としての「日本」の漢字の文字の意味は太陽そのものだ。太陽は金色、月は銀色と壮大な宇宙をイメージさせる。
仏教美術においても金は多用されたがそれは光を放ち、神さらに天国の存在を想起させた。
そもそも自然と太陽のつながりは一体であり、昼と夜は太陽の運行そのもので、太陽によってすべての植物、生物は存在でき、さらに春夏秋冬の四季は豊かな日本の自然につながる。
美術でいえば、やまと絵では背景色として金が多用されたがこれは日本の美術の特徴である。
しかし明治以降こうした大和絵は急速に衰退してしまう。水墨画においては日本の画家たちは中国の牧谿を手本とした。
牧谿の作品のすべてが日本にあるといわれるくらい日本で人気が高く、一方中国では人気がなかった。そのため日本の水墨画は中国と違うスタイルで発達したといえる。
さらにやまと絵と水墨画の中間の着色水墨画が発達し、宗達、光琳ら琳派は植物に垂らしこみ技法を積極的に採用し花鳥風月の美術を広げた
。1921年生まれの平松輝子は関東大震災にあい、さらに大東亜戦争などのひっ迫した社会情勢のため美術学校には行かずに独学で絵に取り組んだ。
今回展示した20代に描いた4冊の画帳は主に植物の着色写生であるが、トンボ、蝶などの昆虫類なども細密に描かれていた。それは近世美術の画家たちが描いた姿をイメージさせる。
そもそもこうした花鳥風月の絵は江戸時代の生類憐みの令につながる仏教思想である生物への慈愛、さらに野に咲く様々な花々は仏教の輪廻、さらに万物に神が宿るという古神道の自然主義があった。
そしてそうした自然の中で時を過ごすことのできる幸福感が現代の今において見直されつつある。さらにそうした幸福感は金銀の絵の背景にふさわしい。